2015年9月1日火曜日

J. L. ゴダール映画のこと

AmazonでDVDが安くなっていたので「勝手に逃げろ/人生」ようやく観まして、たまりませんな。ひさびさにまたゴダール “マイ” ブーム。思えば(20代の頃にうわついたデートなんかで観たのは記憶にほとんど残ってなくて)最初に「!」と思ったのが2003年、今でも感謝しているT山荘/映画監禁部屋という少々おっかない名前の場所でたまたま、見せられた「カルメンという名の女」。

2003年01月18日(土)
夕飯をごちそうになりながら23時すぎまで「作戦会議」、そのあと映画。一本目は「シシリアン」だったかな、イタリアの映画。会議の疲れもあって(?)ほとんど印象が薄い。二本目はゴダール「カルメンという名の女」、最高。なるほど、うわさのゴダール。映画のなかで映画を撮っているというか、考えているというか。人が悪くてユーモラスで、音の処理といい全体のザクっとした感じといい、すごく(私にとって)気持ちがいい。「僕は何をすればいい?」とウロウロする(役の)ちょっと頭悪そうな二枚目に、何度も笑う。波の、すっとぼけた感じもナイス(ある連なりのなかで多かれ少なかれ、いま見ているものは前のものの影響を受けるわけで、いろんなものがつねに「〜として」人間=私には見えてしまうところが、なんとも面白い。そういえば去年の「飢餓海峡」ラストシーンの海の、あのやるせなさ!)。いろいろ書きたいけどキリないので以下略。

その後、「パッション」も「マリア」も良くて1980年代のゴダール、とても気になっていました。その幕開けとなった「第二の処女作」というのを、ようやく。

こんな絵が描きたい、と観るたびに思います。絵のモチーフのことでなく、絵そのもの。その質感やタッチ、抽象と具象の按配だとか、何かへの参照・コラージュだとか、まとめ方のセンス、上品さだとか。とにかくまぁ(絵の話は僭越だし、ややこしいので措いといて)思いつくままに「勝手に逃げろ/人生」から挙げると、例えば、


これ(↑)いきなりですが娼婦2人にお客2人、四つ巴になっての性戯のシーン。順番に、ペニスをくわえさせ、挿入させ、尻の穴をなめさせ、最後に口紅を塗る、だったかな。一周してみて、音/サウンド・トラックが足りないということで、みんなで今度はア、ウなど、順番に喘ぎ(?)声を発しながらって……そりゃ映画たしかに映像+音だけど。故障したテクノ・ミュージックのよう。

何やってんだ。と笑ってしまう自分と、いや性戯でなくとも普段の仕事なんかでも、ないか?「何やってんだ」と思うこと、先生であれ裁判官であれ、あるいは官僚であれ。そう思う自分と。下半身ポロッと出ていても、口紅を塗ってもらっていても、写真の男性、じつに落ち着いていて……昨今だったら「カワイイ」とこれも言われるのかしらん? 観ていて本当に(勝手になんとなく他人と思えないところもあって)おもしろい。

娼婦たちにとっては、それこそ普段の仕事。とつとつと。社会の中をいろんな仕事や役割が回り、お金が回り、夜の街をたくさんのクルマが流れていく。みんな狂っているのか、深く絶望しているのか、死ぬほど退屈しているのか、それとも/それでも/それを、楽しんでいるのか。どっちでもいいのか、べつに? タイトル「勝手に逃げろ/人生」だし。


なんていう考えがパッ、パッと頭を横切りながら(あるものはすぐ忘れ、あるものは後まで残りながら)それとともに出てくる風景の美しさや、表情や、ドキッとする音や、映像と音の妙なつながりに魅了されたり、翻弄されたりする体験。つくづく複合的だと思います、過激に。引用されるテキストの元ネタなんかも分かると、きっと、なおいっそう。分からなくても私には十分に濃くて、おもしろいけど。

映画そのもののサウンド・トラックに対して、登場人物が「いまの音楽、なに?」と問うような、分かりやすい(人に説明しやすい)ケースのみならず、ちょっと、なんていうか、ところどころ宇宙人的な、映像+音の感じだとか。男性/女性の対比などの「物語」は、あってくれるおかげで眠くもならず、ありがたいけど、それこそ二の次で。

冒頭に出てくる字幕「Un Film Composé par Jean-Luc Godard(A Film Composed by Jean-Luc Godard)」の、compose というのも勝手に、ええ、よく分かります。そういうことだと思う、たしかに。いや音のみならず、オーディオ&ビジュアルにその都度「意味」や言葉も加えた、全体についての compose。観たあと耳などの感覚がしばらく変わってしまう映画=作品。

そう、ビジュアルを真似るとか、気のきいた引用するだとか、そんな直接的なことでなくて、根本的には、とにかくこの過激な複合性に憧れるんだな。絵描きとして。ムチャクチャで上品で、きっとリアルでもある、こんな絵がいつか描いてみたいもの。


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